東京医科大学公衆衛生学分野

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Column

腸内細菌について

人の消化管には約1,000種、100兆個の細菌が存在し、腸内細菌の持つ総遺伝子数はヒトの持つ遺伝子の100倍以上に上ることが明らかとなりました。1)このような背景から、腸内細菌を一つの臓器として例える考え方が広まりつつあります。腸内細菌は、エネルギー摂取、すなわち、消化にかかわる酵素を備えており、ヒトは腸内細菌を利用して食物からエネルギーを獲得しています。1)
ヒトは母体内では無菌状態の胎児として保たれていますが、大腸菌(E.coli)、腸球菌(enterococcus)、ぶどう球菌(Staphylococcus)、クロストリジウム(Clostridium)が出生24時間以内に腸内で増殖を開始し、生後3〜4日になると乳酸桿菌、ビフィズス菌(Bifidobacterium)が増殖を開始します。1)乳児期以後の腸内細菌叢安定で各個人に特有のパターンをとるとされますが、様々な環境因子(食事や抗生物質など)が影響し、近年、様々な生活習慣病との関連が報告されています。腸内細菌は、消化しづらい食物繊維を利用して、エネルギー源となる短鎖脂肪酸を作り出したり、腸に直接作用して、腸の粘液産生を促したり、感染防御に働き、さらにコレステロールの代謝調節などにも関わっています。2)腸内細菌の観点からも、食物繊維をしっかり摂取することは重要ということですね。

参考文献
  • 1) 安藤 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能 日本内科学雑誌;104(1):29-34. 2015
  • 2) 鎌田ら 脳腸相関における腸内細菌の役割:臨床栄養 臨時増刊号126(6)p741-744、2016